柳美里さんによる紹介文の後に、柳さんから寄せられた「31の質問」への回答が示されます。


■私設文学ファンのHP


まさ

 まささんとは、時雨さんが管理人をしているチャットルームで出逢いました。そのころわたしは完全にネットにはまっていて、ワープロで原稿を書きながら横目でチャットルームを見張っている(チャットルームの地縛霊と化していた)ような状態でした。で、まささんが無人のチャットルームにふらっと入ってきて、あまりにも淋しそうだったので、入室して「ちょっとお話ししませんか?」と話しかけたんです。
 1分以上沈黙がつづいたので(チャットでの1分の沈黙ってすごく長いよ)、入れ違いで退室しちゃったのかなと思ったら、「はい。お願いします」と返事があり、その硬直した感じに、こっちまで緊張してしまったことを憶えています。途中で割り込んできた時雨さんにHPのアドレスを教えてもらって、まささんが草野球チームのピッチャーだということと、そのチームでのあだ名がトニーだということを知った瞬間から、わたしは彼のことをトニーと呼びつづけています。
 彼のHPにはわたしの作品の評論が載っています。
 評論としての成否はさておき、読んで書くという行為を通して知りたい、関わりたいという熱意が伝わってきました。
 それで、わたしは彼に、修士論文の材料として必要ならばインタヴューに応じても構わない、広島まで足を運びます、という内容のメールを送ったんです。
 チャットで何人かと数度に渡って衝突したとき、かならずその場に居合わせて、わたしとの衝突(決裂)を恐れず果敢に<対話>を挑んできたことも大きいです。そして、チャットの相手がどんなひとでも、どんな話題でも(下ネタでも、嫁姑問題でも、ダイエット話でも、文学論でも)面白がって言葉を交わしているところにも好感が持てました。
 インタヴューのときの話は、彼が論文に書くのでナイショです。
 いっしょにフルマラソンを走ろうと誘いました。
 いまも走っているか、42.195キロを完走するか、完走あるいは途中棄権して広島に帰ったあとも走りつづけるか──、トニー、わたしはとっても楽しみにしてるんですよ。
 フレー! フレー! トニー!



●柳美里からまさへの31の質問

1) はじめてチャットで出逢ったときの心境は?
「来た〜!!」「マジで来た〜〜〜!!」(パニック)
2) 話の内容は忘れちゃったんですが、矢継ぎ早に質問したような気がします。どの時点でわたし=柳美里だと信じましたか? 信じるに至った理由は?
 矢継ぎ早に質問を浴びせられた時です。
 質問の内容が僕の中で抱いていた「柳美里」とシンクロし、これは間違いないと確信しました。
 旧掲示板の方の書き込みを見ていたときも、ハマリようや答え方などに『水辺のゆりかご』やそのほかの作品に刻まれた柳さんの筆致が似ていると思っていたので、本人だとは思っていました。ほとんど「勘」でしたけどね。

3) わたしとはじめて顔を合わせたときの心境は?
「本物だよ〜〜〜」
「あぁ、大丈夫かも」

4) チャットで話していたときと、直接話したときの差は? 同じだと思ったところと、違うなと思った ところがあったら教えてください。
 チャットでの柳さんは、いつでもナイフを握り締めて身構えている感じでした。誰にでも喧嘩を売り、誰からも喧嘩を買う。「虚構」の世界だからこそ、柳さんの「私」が曝け出されていたような気がします。
 直接話した時は、この人は「虚構」の住人なんだなぁと感じました。

5) 柳美里作品のなかで、好きな作品を3つ挙げて、その理由を書いてください。
『家族シネマ』=ラストシーンが異色だったから。置き去りにされた主人公が自ら風と「折り合おう」とする姿が印象的でした。
『静物画』=柔らかく澄んだピアノの音色のような作風が好きです。
『石に泳ぐ魚』=コメントできませんが、挙げないわけにはいかなかったので。

6) 柳美里作品のなかで、嫌いな作品を3つ挙げて、その理由を書いてください。
 3つは思い浮かばなかったので、ひとつだけ。
『タイル』=「モザイク」が浮かび上がってこなかったです。「倫理」にしろ、「狂気」にしろ、どこか掴みどころがなかった。作品に霧がかかっているようで、嫌いというより、もどかしさだけが残ってます。

7) 行ったことのある場所で、もう一度行ってみたいと思う場所は?
 広島県三和町にある学校の宿泊施設。満天の星空をもう一度見に行きたいです。
8) 行ったことのある場所で、二度と行きたくないと思う場所は?
 行きたくない「場所」はないです。
9) 行ったことのない場所で、一度は行ってみたいと思う場所は?
 北欧のオーロラの見えるところ。
10) 行ったことのない場所で絶対に行きたくないと思う場所は?
 虫がいっぱいいるところ。昆虫、大嫌いなんで。
11) 逢ったことのあるひとで、いま、いちばん逢いたいひとは?
 ナイショ
12) 逢ったことのないひとで、いま、いちばん逢いたいひとは?
  ナイショ
13) ナイショ(ひそひそ)話、好きですか?
 好きじゃないです。発言は、その場にいる人全員に対してであることを前提にしています。
14) チャットルームで匿名の人物と出逢いますよね? 相手のなにをいちばん知りたいですか? それとも、どうせ虚構なのだからなにも知らなくていい?
 そのひとの「言葉」。「知りたい」から話を楽しめるんです。

15) わたしにトニーと呼ばれるのはイヤ?
 問題ないですよ(笑)
16) 幼少のころから現在に至るまでの全あだ名と、その由来を教えてくださいな。
「ベー(ちゃん)」=友達が着ていたTシャツに「BABY」とロゴが入っていました。それを指摘した僕を面白がって「ベービー!!」と友達が呼んだのがきっかけです。いまでも中学校から付き合いの続いている友人はそう呼んでいます。
「タニ(さん)」=名前を縮めただけですね(笑)大学時代はもっともポピュラーなあだ名でした。
「ミツミくん」=本名の「充美」(マサミ)の読み方を変えたものです。当て字なんで、普通に読んだら「ミツミ」と読みますよね。それを友人が面白がって呼んでいたら、一部で定着してました。

17) 自分の本名は好き?
 最近は好きですね。けれど、ほとんど名前で呼ばせることはないです。
18) 実在する人物でも、小説や映画のなかの登場人物名でもいいですから、いちばん好きな名前を教えてください(古今東西よりどりみどりですよ)。
 紫(ゆかり)
19) 命あるもの(犬でも猫でも亀でも)に名を与えたことはありますか? なににどんな名を与えたか教えてください。
 中学生の頃に拾った猫。「風太郎」(ふうたろう)と名づけました。
 夜中に煙草を買いに出た帰り道、風に乗って聞こえてきた鳴き声を辿っていったら、ちっちゃな子猫がゴミを漁っていました。捕まえても逃げなかったので、そのまま拾って帰ったのがその子です。
 一年ほどで名前のとおり風のように去っていき(死に)ましたが・・
 それと現在の飼い犬。黒かったので「クロ」。かなりおバカです(汗)

20) もし、自分の子どもが生まれたら、名づけたいと思いますか?
 はい。
21) 我が子の名をつけるとき、なににいちばん留意するでしょう? 画数とか響きとかいろいろありますよね?
 意味。どんな子に育ってほしいか、そのイメージに合う漢字を探してから、画数や響きは調整します。
22) 戒名についてどう思いますか?
 死者への祈り。
23) 洗礼名についてどう思いますか?
 わかりません。
24) 生と死、親しくしているのはどちら?
 生。
25) どちらか選べるとしたら、生まれ変わりたい? いまの生でおしまいにしたい?
 生まれ変わりたい。
26) いくつまで生きていたいというのはある?
 30過ぎくらいまでは。
27) なにをするまで生きていたいというのはある?
「私」の「言葉」を残せるまで。
 それと、奨学金を返し終わるまでは死ねません(笑)

28) 現時点で、あなたの名をいちばん多く呼んでいるのはだれだと思いますか?
 誰でしょうねぇ? 思い浮かびません。
29) 名前をもっとも多く呼んでくれたひとが、もっとも愛してくれたひとだと思いますか?
 いいえ。
30) だれかの名(母親以外のひとだよ)を呼んで泣いたことはありますか? それはだれの名ですか?
 あります。名前はナイショ。けっこういます
31) 死んでゆくときはだれかに名を呼んでほしい? それともだれかの名を呼びたい?
「呼ばれたい」し、「呼びたい」です。
 





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